思い出に残る空間を大切にしたいと思います。特に子供時代や青春を過ごした場所は強く胸に刻まれるでしょうが楽しかったこともまた辛かったことも、空間と対になることで、ほろ苦くも幸せに思い出されることがあります。それは人生にとって、かけがえのない空間体験ではないでしょうか。
ぼくにとって深く思い出に残る場所のひとつが、ICU(国際基督教大学)のキャンパスです。高校卒業後故郷を離れ、初めて東京で一人暮らしをしながら通った大学なので、思い出深いのは当然でしょうがそれを差し引いても、素晴らしい空間で過ごしたと思います。先日久しぶりに訪れる機会があり、変わらない姿を嬉しく思ったので、ここで少し紹介します。
三鷹市にあるキャンパスは、広大な雑木林の中にあります。住宅街の車通りを、巨大な林の縁に沿って進み、そこにひっそりと現れる正門を入るとまずは桜の大木が両側に並び、長さ600mとも言われる真っすぐな道が迎えてくれます。向こうがかすむほどのこの道をゆっくりとアプローチする間に、すっかり気分が入れ替わります。
これを過ぎると、ぽっかりと広い空が開けます。 ここがキャンパスの空間。
まず正面にチャペルが見え、その脇を過ぎると生活の中心である芝生の広場が現れます。
広場には、小道を挟んで、二つのこぶ状の小山があります。なだらかに芝生に覆われた小山は「ばか山」と呼ばれ、親しまれています。昼寝をしたり、おしゃべりをしたり、読書をしたりと、ICUの学生はここで芝生に座るのが基本なので男女を問わず、ジーンズなど汚れてもいい服装の人がほとんどでした。
この「ばか山」を中心に、図書館、学生会館などの建物が配されていますがすべて背が低く地に伏せたようなシルエットで、広い空のスカイラインは周囲の木々がつくっています。ただひとつ本館は比較的大ぶりな左右対称の建物で、広場に対して屏風のように建ち、空間を引き締めています。
学生が少ないこともあってか、大学としては建物が極端に少なく、それぞれの規模も小さいです。建物の間は大きく距離が取られ、林の中にぽつりぽつりと建っている、という風情です。中にはレーモンドや前川國男といった建築家による佳作も含まれ、どの建物も丁寧につくられています。
レーモンド設計の図書館
前川國男設計の大学博物館
学生会館の階段ホール
このような佇まいが、外の世界とは切り離されてゆったりした雰囲気をつくり学生にとって、天国のような空間をつくっているのだと思います。この空間、久しぶりに行って、やっぱり良いなと強く思ったのですが何にそれほど惹かれるのか、と考えてみました。そこにはふたつの要素があると思います。
まずは長い時間の流れが感じられるということです。学生にとっての生活の場は小さなエリアですが、それを取り囲む広い雑木林は周囲の町からキャンパスを完全に切り離しています。空高くそびえる木々が悠久の時間を感じさせる一方でその環境が変わらずに保たれていることは、里山のように、人間と環境が関わってきた時間の厚みを感じさせます。
もうひとつは、距離感のあるキャンパス計画です。町から大学に至る距離、建物から建物に移動する距離、すべてに距離があることでゆったりとした生活のテンポがつくられます。それが単に間延びしたテンポにならないのは、「ばか山」という中心があるからです。
これらが相まったICUは、ゆっくりと物事を考えるのにふさわしい空間でした。それは、大学から学生への最高のプレゼントではないかと思います。
うほ~っステキなキャンパス!!
私の大学は神田の雑居ビル街に『大学のビル』が点在するという
まったくもってこのキャンパスの両極端になるようなとこだったなぁ。。
広い空もなければ樹木も芝生もない
でもステキな思い出はあったりなかったり。。笑
建物を訪れてその当時を思い出す感覚、
音楽を聞いて当時を思い出すのににてるなと
須川さんのブログ読んで思いました