郊外住宅地に建つ二世帯住宅。 親世帯と子世帯+たくさんの動物と植物のための住宅です。 それぞれの世帯に対応した二つの建物を建て、その隙間は町並みが入り込んだよう。 そこは動植物のための土間空間で、アジアの町並みのような活気あふれる空間をイメージしました。 土間空間によって世帯間には適度な距離がありながら、お互いの気配が感じられます。 外観は、大きなボリュームを明度の異なる4つの青みがかったグレーで塗り分け 抑えられたボリューム感が、周辺住宅地と調和します。
<新建築住宅特集20137月号掲載テキストより>
郊外住宅地に建つ親世帯と子世帯、加えて両親が育てる多くの動植物のための二世帯住宅。それぞれの世帯に対応した二つの「イエ」の隙間に街並みが入り込んだような雰囲気を作りたかった。そこは動植物のための土間空間で、アジアの街並みのような活気あふれる空間をイメージした。
土間空間は、表のアプローチから内部の路地を経て、裏庭まで敷地いっぱいに広がる。犬の散歩の後、路地に面した浴室で足を洗う、鳥を外に出して日光浴させる、鉢植えの南洋植物は夏は外に出し冬は内に入れて防寒する、など頻繁に動植物を出し入れするため、内外を行き来しやすくしている。
また熱容量の大きい土間床は、夏は日射を遮って冷気をため、冬は日を当てて暖気をためることができ、それを各イエに与えることでできるだけエアコンに頼らない生活を目指している。夏は鯉の池で冷やされた冷風を室内に採り込める。
ふたつのイエは、各世帯が互いに干渉しないように独立性を高め、路地空間によって適度な距離が保たれるようにした。その表現として、イエとイエが路地を介して向かい合って建っているようデザインし、イエと土間がまるで空に覆われるようにひとつの天井を架けた。土間に面した2階の開口を通して連続する天井面が見え、互いの生活がひとつ屋根の下で広がっていることが垣間見えることで気配を感じ合い、各世帯が独立しながらもつながりを感じられる。
天窓、照明機器を収めるくぼみ、天井裏収納の開口、薪ストーブの煙突貫通口などを、薄い天井板の四角い開口として同様のデザインにし、天井面の統一感をつくっている。この開口を通して天窓から木漏れ日のように穏やかな光が注ぐ。これらを開ければ重力換気で風が通り、土間の匂い抜き、子世帯の換気として機能する。
外観では、軒樋で水平線を強調して寄棟屋根は空に溶けて目立たないようにした。動植物の生命感を際立たせる3種のブルーグレーのグラデーションで外壁面を3〜5m巾に分割し、小さなイエが影を重ねながら集合する様子を表現した。この操作によって全体ボリュームの大きい建物を周辺の住宅のスケールに調和させた。(須川哲也+須川真紀子)
- 用途:一戸建ての住宅(二世帯住宅)
- 所在:千葉県船橋市
- 延床面積:190.40m2
- 設計期間:2012
- 撮影:新建築写真部
- 新建築住宅特集2013年7月号「特集/集まる〜世帯のあり方」掲載