流れの家

都内住宅地に建つ二世帯住宅。

二世帯に対応して南北に二棟が並び、それぞれ南からの光と風を迎え入れて、明るく風が流れる住環境をつ くっています。内部に外の路地が流れ込んだように感じられ、スキップフロアを半階移動する度に様々な高さや広さの居場所があります。リビングは軽快な屋根 のかたちに沿って風が吹き抜ける広場のような空間です。

密集市街地の困難な条件の中、光、風、熱の流れが良くなるよう、コンピュータシュミレーションを用いてデザインと環境のバランスを検討しながら、設計を進めました。

<新建築住宅特集2013年7月号掲載テキスト>

都心の2世帯住宅。両親が住む敷地内に、姉妹それぞれの家族の住宅を加え、計三世帯のための小さな町並みのような環境を計画した。密集市街地ながら長年地域の人々が守り育ててきた良質な周辺環境とつながっていく様々な「流れ」を作ることで、南北に長い敷地に通風、採光、空間の広がりを確保しながら敷地の個性を生かした住環境を実現した。
路地の流れ
敷地は路地の突き当たりにある。その流れを延長し折り曲げて、アプローチ、庭、車庫を兼ねる新たな路地空間を設けた。路地が膨らんだ小さな光庭を、各戸に対応して設け、流れの中の溜まりとしている。そこは、子供たちが三世帯から見守られて安心して遊べる空間で、室内に光や風を呼び込む空隙でもある。その効果で両親宅も、明るく風通しが良くなった。さらにこの流れを室内にも延長した。スキップフロアで一体感のある室内を立体路地と見立て、隣地の庭などを借景にした広がりのあるシーンが連続し、広場に見立てたリビングを経て、ルーフバルコニーで路地を見下ろす場所に立つ。外壁の南北面はグレーのグラデーションとし、断片化した周囲の風景に溶け込みながら、路地を歩くリズムをつくり出した。
光と風の流れ
路地や中庭によって周辺や2住戸の間に距離を取り、風や光が入りやすくした。南から北に向かって大小大小と繰り返すボリュームの、大きいヴォリュームは南に伸び上がる片流れで光と風を室内に取り込み、小さいヴォリュームの高さを抑えてその効果を高めている。リビングでは屋根をV字に折り空間の広がりをつくりながら、南北の卓越風の流速を室内外で高め、通風を促した。仕切りが少なく一体感の高い室内空間では、光が下階まで流れ落ち、風は建物全体に流れる。
熱の流れ
建物全体の断熱性能を高め、できるだけ空調に頼らない室内環境を作り、また空調使用時には、一体空間ができるだけ効率的に室温調整されるようにした。シルバー屋根は意匠性だけでなく、夏期に熱負荷が小さくなる効果がある。LDKの大空間は冬期にエアコン暖気が天井面にたまるので、家庭用扇風機の効率的な配置で空気の流れをつくって熱を平準化し空調効率を高めている。1.4mの延床面積対象外の床下収納を作り、収納スペースを確保しつつ空気層をとる事で、居室部の断熱性能と持ち上げられたLDKの日射率を高め、冬期の居住性を良くした。(須川哲也+須川真紀子)

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